坂の上の雲

ITと出逢った本に関するブログ

「日本再興戦略」を読んで

 この本との出会いのきっかけ

きっかけは確かYouTubeで、落合陽一氏が情熱大陸に出演した回の放送を見たこと。

単純におもしろい人がいるなってその時に思って、著作を調べて見たら、このインパクトのあるタイトルの本がヒットして、気になって一気に読んで感じ。

 

ちなみに、個人的に落合氏がおもしろいな、と思ったのは以下の点。 

  • 「現代の魔法使い」の異名を持つ、世界的な科学者であること
  • 育成方法がおもしろいこと。単に単位が欲しい人には簡単にあげるけど、自ら望んで挑戦する人には鬼のような課題(1週間で論文100本?)を課したりするらしい
  • 超忙しいにも関わらず、普通に深夜にドラクエをやっていること

 

あらすじ

落合陽一氏は科学者だが、科学(テクノロジー)だけではなく政治、歴史的な観点からこの日本をどうやっったら再興できるかについて記述している。人間が生み出したテクノロジーと自然を融合させた新しいプラットフォーム「デジタルネイチャー」を提唱。

 

惹かれたところ

「欧米とはユートピアであり、日本人の心の中にしかないものです」

そもそも、欧州と米国は異なるものであって、一緒に語れるものではない。エンジニアなんかやっているとよく分かるが、ITはどうしても欧米に対して気後れを感じてしまう。

でも本当はそうじゃなくて、欧米はただのユートピアにしか過ぎないこと。欧州には欧州の良い点・悪い点があり、米国には米国の良い点・悪い点があって、そして日本には日本にしかない良い点・悪い点がある。日本は日本の特徴を認識した上で、日本独自の道(Japan Way ※エディー・ジョーンズ)を模索するところから日本の再興が始まる。昔の女子サッカーなでしこJapanみたいに。

 「ワークライフバランスという言葉が吹き荒れていますが、ワークとライフを二分法で分けること自体が文化的に向いていないのです。日本人は仕事と生活が一体化したワークアズライフのほうが向いています」

実態を顧みず、定時になったら仕事を切り上げようとするワークライフバランスの風潮が現場でも度々見受けられるが、日本人には日本人にあった仕事のやり方を模索するべき。米国の働き方を真似するのではなく、無理なく・自然に働けるやり方を見つけることが大切。 

「僕らは日本をIT鎖国できなかったせいで、中国のようにアリババやテンセントやバイドゥを生むことができませんでした。2000年代の日本は、IT鎖国をした中国をバカにしていてグレートファイアウォールと揶揄していましたが、結果として中国のほうが正しかったのです」

中国が閉鎖的な施策を取ったのは政治的な理由が大きい気もするが、結果論だけで話をすれば、日本はAmazonFacebookTwitterを生み出す事ができなかった。市場がオープンであるがゆえに、Mixiなんかは淘汰され、この市場では日本は売上を上げることができないままになっている。 

「平成は先人の遺産を食いつぶしただけで終わろうとしています。ポスト平成時代の時代に同じ過ちを繰り返してはいけません」

平成が終わろうとしている。かつて昭和でドン底を味わって、そこから奇跡的な復興を遂げた日本。でも平成では、衰退する一方だったと思う。新しいポスト平成の時代には、後世に引き継ぐためにもう一度、奮起する必要がある。 

「人口減少と少子高齢化はこれからの日本にとって大チャンスなのです。(中略)今のうちから人口減少・高齢化社会に対応した社会に移行できれば、日本は世界より20年先に行けます」

ネガティブに受け取られがちな少子高齢化が、大チャンスだと言い切る落合氏の理由は3つ。

①自由化・省人化に対する打ち壊し運動が起きない

AIや機械学習の登場で、これから人間の仕事はどんどん機械化していく。その時に、機会に仕事を奪われる人(失業者)がたくさん出ると、社会は変革を求めるようになってくる。しかし、日本は少子高齢化であるが故に、どの企業も人材確保が難し状況に既になっている。だからこそ、仕事を機械化してもネガティブな圧力が発生しにくい状況が出来上がりつつある。

②輸出戦略ができる

 アフリカや中国、インドなど、爆発的に人口増加を続ける裏側で、どの国よりも先んじて人口減少を迎える日本だからこそ、高齢化に対する様々な実証実験をやりやすい環境となり、実証実験した結果を、先のこれから高齢化を迎える国に対して輸出する戦略が成り立つようになる。

 ③教育投資が増える

少子化を迎えるからこそ、一人あたりに費やす教育費用を潤沢に確保できるようになる。十分な教育の機会を与えられれば、そこから新たな付加価値を創出することができるようになる。

トークンエコノミーは国の形を変えるだけではありません。経済の形、産業の形を大きく変えるポテンシャルもあります」

北方謙三の楊令伝・岳飛伝を読んでいる人にはイメージしやすいのだが、このトークンエコノミーがまさに物流の道にあたる。今までは国の中央銀行が発行した貨幣を中心に経済圏が成り立っていたが、VALUやタイムバンク等のサービスの登場で、これからは個人の価値に対して経済が成立するようになってくる。国家と国家の間の経済の壁が低くなり、新しい国(もしくはそれに代わるもの)が生まれてくる。その時は当然、働き方も大きく変わっているはず。今の段階から、世界市場で個人の付加価値を考える事が重要だと思う。また、この時代になるとシリコンバレーによる搾取は終わりを迎える事になる。

「日本をアップデートし、日本を再興するためには、まず意識を改革しなければなりません。これまでの常識を捨てて、新しい時代を生きるための能力を育む必要があります。(中略)新しい時代に磨くべき能力とは、ポートフォリオ・マネジメントと金融的投資能力です」

これからの時代は、百姓(=多能工)時代になる。百姓とは100の生業を持つ人のことを意味していて、何か1つの技能だけあれば、一生食べ物には困らないという時代は終わる。すべての人が職業のポートフォリオを考える必要がある。また、金融的投資能力とは、何にコストを費やすか山を張るということ。多能工時代になるがゆえに、1つの生業をこなしながら次の生業を模索する必要がある。

 

結び

今までは「少子高齢化」と聞くとネガティブなイメージしか持ってこれなかったが、この本を読んでその考え方が180度変わってしまった。単純と言えば単純だと自分でも思うが、本当に大切だと思ったのは、同じ物事であっても捉え方は様々であり、ポジティブに考えれば、その人にとっては逆境もチャンスに変わるんだろうと思う。

 

 

日本再興戦略 (NewsPicks Book)

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